慢性心不全

どんな病気?
全身に血液を供給する心臓が、様々な原因により動きが悪くなる病気です。心臓の四つの部屋をしきる弁の異常や心臓の筋肉の異常、部屋と部屋の間の壁に穴が開いていたりと色々な要因があります。
中でも多いのが、僧帽弁閉鎖不全症という左心房と左心室を仕切っている弁が異常を来す病気です。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルやマルチーズ、プードルやダックスフントなどの犬種が発症しやすい、として知られています。

どんな症状?
初期段階では、症状が出にくいです。聴診やレントゲン検査で偶然判明することが多いです。
軽〜中期段階では、気管支の圧迫により咳が出ます。最初は興奮したときだけだったのが夜中や日常でも観察されるようになってきます。血液の流れは、肺→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈→全身
となってますから、僧帽弁が閉じにくくなり血液が左心房から肺へ逆流するようになると、肺水腫といって肺に血液が充満し、重症化することになります。
末期段階では、動くことも困難になり安静時にも呼吸困難が現れます。酸素が十分全身に送られませんから、酸欠状態になり酸素室から出ることが出来なくなってしまいます。

どんな治療をするのか?
僧帽弁閉鎖不全は10才を超えると発症しやすくなります。いわば弁の老朽化と言えます。一部の先天性疾患を除いた、こういった老齢性の病気は手術の適応となりにくいため、大部分の子は根本的な治療:心臓そのものを治すというのは難しくなってしまいます。ですが最近は良い薬が出てきており、飲ませ続けることによって心臓への負担を減らし、余命の延長を図ることが可能になってきています。この薬は、心臓から出ている血管を拡張:出口を広げてやることにより逆流しにくくするという原理で心臓の負担を減らします。また、併せて塩分などを制限したフード、運動制限などを行うことにより更なるQOLの上昇を望めます。

予後は?
薬、食事、運動制限の3本柱で立ち向かうと、かなり良い状態で過ごすことが可能になります。しかし、根本的に心臓の弁が良くなっているわけではないので少しずつですが状態が悪くなってきてしまう事があります。また、過度に興奮したり運動をしてしまうと心臓に一気に負担がかかり急に悪化することもあります。飼い主さんの頑張りがかなり要求される病気ではありますが、頑張りに答えてくれる病気でもあります。時々咳をする、興奮すると舌が紫色になってくる、などお心当たりのある方は一度ご相談下さい。